八戸市の生活交通確保の取り組み

全国的に進む公営バスの撤退・経営の見直し、さらに民営バスの路線撤退や減便など、バスを取り巻く環境は厳しくなる一方です。
八戸地域も同様に市営バス事業の経営見直し、民営バスの路線撤退や減便などの動きが加速している状況にあります。
しかし、バスは生活のために欠かすことができない足として利用されており、特に高齢者や通学生、さらに移動制約者の方にとって
は、なくてはならない生活基盤の一部となっていることも事実です。
八戸市では平成16年度から「八戸地域生活交通計画策定事業」に着手しており、平成17年度も引き続き「八戸市生活交通再編計画策
定事業」を策定する動きに出ています。
当研究会でもこうした一連の動きについて、これからも個人レベルながら積極的に応援し、かつ生活交通確保に向けた取り組みをご
紹介していきたいと考えています。

◆これまでの取り組みと概要◆
平成16年度の「八戸地域生活交通計画策定事業」では、福地村での新システムで実験運行の実証実験が行われました。
その時の様子を当研究会でも取材しています。
この時に実証実験運行されたのは、ノンステップバス使用による八戸市(日赤病院・中心街)へのシャトルバスと、シャ
トルバスに接続させる形で福地村内を巡回するDRTでした。
これらは八戸市、福地村、交通エコロジー・モビリティ財団の共同事業として実施され、日本財団の補助事業で行われて
います。
また、本事業は、

 1.福地村での生活交通モデル実証実験「予約式ふくちふれいあいバス」実験運行と事業評価
 2.八戸市生活交通診断

の二本柱で行われました。
このうち、平成17年度に策定が予定されている「八戸市生活交通再編計画策定事業」については、上記2の「八戸市生活
交通診断」での評価を受けて行われることが含まれています(市営バス種差線と美保野線の見直し)。
また、平成17年10月には南部バスの南郷区内の一部路線廃止と減便が実施されることになっており、当面の暫定措置とし
て「南郷コミュニティバス」を運行することで生活交通の確保を対処することになりました。
また、平成17年3月31日に八戸市と南郷村が合併する際の合併協議会において、南郷村内で運行されていた患者バス事業
についても当面は引き継ぐことにしていますが、合併後にバス運行事業については、この他にもスクールバスなどもある
ことから、バス事業全体について、合併後2年をめどに包括的なバス交通のあり方を検討し、事業内容の見直し・改善を
行うことになっており、「八戸市生活交通再編計画策定事業」の中で南郷区内にふさわしい生活交通モデルを構築するこ
ととしています。
なお、上記の概要については下記の関連リンクも合わせてご覧頂けると分かりやすいと思います。
 
◆関連リンク◆
市長会見 平成16年6月21日 八戸地域生活交通計画策定事業について
予約式ふくちふれいあいバスレポート
交通エコロジー・モビリティ財団「高齢者・障害者の移動円滑化に関する調査研究」(平成16年度)
東奥日報特集記事「地域のあした/平成の大合併−第7部−まちのかたち」
市長会見 平成17年5月20日 南郷コミュニティバス及び八戸市生活交通再編計画策定事業について
交通エコロジー・モビリティ財団「高齢者・障害者の移動円滑化に関する調査研究」(平成17年度)
八戸市・南郷村合併協議の概要(下の方にバスに関する記述があります)
八戸市生活交通検討委員会委員募集のお知らせ
「南郷コミュニティバス」運行業者の公募について
 
◆「八戸市生活交通再編計画策定事業」関連記事◆
南郷区巡回バス運行−10月の路線廃止・減便受け−八戸市
(東奥日報2005年5月23日朝刊2面より引用)
 八戸市は、南郷区内を走る路線バス二路線が十月から廃止・減便となることを受け、代替措置として「南郷コミュニティ
バス」を運行する。運賃は一回百円とし、現在、市が運行するスクールバスや保育所児童送迎バス、患者輸送バスも包括す
る予定。ただ、この運行形態は年度内の暫定措置で、地域特性に合った生活交通の在り方を探るため市が本年度策定する
「市生活交通再編計画」で来年度以降の方針を検討する。
 廃止・減便となるのは、南部バスが運行している市中心部と同区を結ぶ荒谷・市ノ沢連絡線と軽米・大平・泉清水・市ノ
沢・七枚田線。
 コミュニティバスは区内を巡回し、「道の駅なんごう」で南部バスの路線バスに接続することを想定している。
 コミュニティバスの運行に伴い、旧南郷村時代から行ってきたスクールバスなど三つのバスは運行を終えるが、市政策推
進室は「現行のサービス水準は維持する」と話している。
 市は、生活交通再編計画策定にあたっての実証実験にコミュニティバスを運行を位置付けており、利用実態や住民アンケ
ートなどを踏まえ、より自律性の高い区内交通への再構築を図る考えだ。
 同計画では利便性が低く、市営バスの不採算路線となっている南浜地区と美保野地区の生活交通についても検討する。
 
実情に即し交通体系構築
−南郷区にコミュニティーバス。南浜、美保野も代替措置検討−
(デーリー東北2005年5月24日2面より引用)
 八戸市は本年度、地域の実情に見合った交通体系の在り方を検討するため、「生活交通再編計画策定事業」を実施する。
公共交通の利便性の低さが指摘されている南郷区と南浜、美保野両地区が対象で、路線バスに代わる新たな交通手段の導入
も含め、効率的な交通体系の構築を目指す。
 八月ごろをめどに、有識者や各地区住民らで構成する「八戸市生活交通検討委員会」(仮称)を設置。実証実験や実態調
査などを進め、来年三月までに再編計画を策定する。事業費は約一千万円で、県の補助金を活用する。
 南郷区では、今年十月から区内の一部バス路線(民間)が廃止、減便される見通し。このため、市は代替措置として
「南郷コミュニティーバス」を運行する方針。事業では同バスを実証実験モデルと位置付け、利用状況を調査した上で、
区内の実情に沿った交通体系を検討する。
 南浜、美保野両地区は昨年度、市と福地村、交通エコロジー・モビリティ財団の三者が実施した移動ニーズ調査(市内七
地区対象)で、公共交通の利便が悪く、日常の外出が十分にできないとの声が、他地区に比べ多かった。
一方で、両地区を通る市営バスの「種差線」と「美保野線」は、路線別営業係数でワースト一、二位の不採算路線となって
いる。
 両地区については、路線バスに代替する新たな交通手段の導入も視野に入れる方針。
 地区内にある大学が運行する送迎バスとの調整や、JR八戸線の活用方法などが検討課題となりそうだ。

◆八戸地域生活交通計画による診断結果◆
【地域の概要(抜粋)】
地区 主な特徴 事業者 バス便数等(平日)
南浜地区 JR八戸線沿いに広がる地域で、市街地への移動に鉄道を利用している割合が高い。
一方、中心街へのバス便数は少なうえ(中心部には1往復/日)非動力系交通による
移動が少なく、マイカー依存も高いと考えられる
市営バス 種差線
・金浜〜鮫地域:5往復
(うち、中心街へ1往復)
美保野地区 市営バス「美保野線」(営業係数 205.4;市営バス全路線中最下位)が運行されており、
ルートも途中の旭ヶ丘営業所で止まる便が多く、八戸市中心街までダイレクトに結ぶ便
は少ない。沿線に八戸大学や同短期大学があり、同地区の人口324名(平成16年度版
八戸市統計書)のうち、125名が両校の関係者(うち学生105名)である。
市営バス 美保野線
短大前〜旭ヶ丘営業所:
8往復
うち、市街地方面2往復
 
【「八戸市域における生活交通診断」による評価点】
地域名 環境 モビリティ 採算性 総合点 総合偏差値 偏差値ランク
根城(白山台) 57.54 57.35 49.79 164.67 57.25
是川 60.78 58.85 53.93 173.55 60.89
南浜 51.18 48.18 34.66 134.02 44.68
豊崎 47.50 33.87 57.42 138.79 46.64
美保野 32.15 42.64 33.72 108.50 34.22
町畑 50.86 47.19 64.36 162.41 56.32
 
【総合評価(抜粋)】
「環境」、「モビリティ」、「採算性」の観点から総合的に評価した八戸市の平均的な生活交通サービスの
水準(偏差値)が50点であるとすると、
特に美保野地区では環境とモビリティの面で平均を大きく下回って
おり、マイカー保有者を公共交通に誘導する施策と公共交通の運行形態の改善を検討することが望ましい。

また、
南浜地区では採算性を中心に、また、豊崎地区でもモビリティを中心に平均を下回っており、それら
改善策について検討することが望まれる。
 
【今後の課題】
 交通診断を行った地区のうち、総合評価の低かった南浜地区と美保野地区では、調査結
果から得られた生活交通の課題と市営バス事業の経営改革の方向を踏まえながら、効率的
な運営方法、運行形態、及び運行エリアの見直しを中心に生活交通事業の再構築を図る必
要がある。また、自動車を持たない人のモビリティを公共交通によってどう増進を図って
いくべきか検討する必要がある。
 あわせて、今年度事業の調査対象地区ではなかったが、平成17年度3月31日をもって八
戸市へ編入された南郷区(旧南郷村)においても、今回の福地村での調査・実験の経過を
参考にしつつ、区内の移動手段及び八戸中心部方面への移動手段の両面から、生活交通の
ありかたについて検討する必要がある。
 これらの地区においては、自律性を高めつつも地域のモビリティを活性化させる生活交
通の再編方法を検討し、具体なプランニング(生活交通計画)に結びつけることが今後の
課題である。

「生活交通再編計画策定事業」策定へ
*出典:平成16年度青森県生活交通ユニバーサルサービス構築モデル事業
「八戸地域生活交通計画策定事業報告書」(平成17年3月)
(八戸地域生活交通計画策定協議会、八戸市・福地村、交通エコロジー・モビリティ財団)


◆市営バス・南部バスの状況◆

◆市営バス美保野線◆
美保野線は旭ヶ丘営業所発着の運行がメインとなっており、市中心街へ向かうバスは1日2本しか
運行されていない状況にあります。
しかし、沿線には住宅地の張り付きも少なく、殆どが草木が生い茂る地区を走り抜けるような状態
になっていますので、営業係数が市営バス路線最下位となってもおかしくない状況です。
また、短大前行きといっても学生がバスを利用することはまずありません。
短大前の1つ先にある八戸大学バス停ですが、短大前と同様に学生の利用は皆無に等しい状態です。
また、八戸大学自体がスクールバスを運行していることもあり、市営バスを利用することはありません。
朝の7・8時台に三日町から八戸大学直通のバスが運行されています。
 
◆市営バス種差線◆
三日町から中心街へは1日1往復のみ直通バスが運行されていますが、他は鮫・旭ヶ丘営業所発着と
して運行される便ばかりです。
それでも三日町発金浜小学校行きの直通便には多くのお年寄りが利用しています。
種差線の大部分は金浜小学校行きとして運行されていますが、旭ヶ丘営業所発着の1往復のみが途中
の法師浜行きとして折り返し運行されています。
 
◆南部バス荒谷・市ノ沢連絡線と軽米・大平・泉清水・市ノ沢・七枚田線◆
旧南郷村時代には南部バスへの補助制度がありましたが、八戸市と合併し南郷区となったたことで平
成17年度八戸市の当初予算には補助金が盛り込まれたものの、八戸市として南部バスへの補助制度が
なく、合併後も南部バスへの補助金支出は行わない方針を固めていました。
これがきっかけとなり、南部バスの路線見直しに合わせ今回の路線廃止・減便が決定されたことが背
景としてあるようです。
南郷コミュニティバスの運行事業者は公募による委託方式を採用する方針ですが、これに南部バスが
名乗りを上げるかどうかが注目されます。

◆八戸生活交通計画策定の経過◆
2005/06/14
八戸市では生活交通交通計画策定に向けて「八戸市生活交通検討委員会」を設置することを決めました。
これに合わせて、市民から公募による委員を募集しました。
八戸市生活交通検討委員会の委員募集
これからの公共交通について考えてみませんか?
 利用者数の減少などにより、バス路線の維持・確保は、年々厳しくなっておりますが、このたび八戸市では、
市内の公共交通の実態および住民のニーズを踏まえつつ、地域特性や費用対効果に見合う持続可能な生活交通
のあり方について検討するため、有識者や市民の皆さんから意見・提言をいただくことを目的に、「八戸市生
活交通検討委員会」を設置することになりました。
 つきましては、この委員会の委員を募集します。公共交通施策についてご関心、ご意見をお持ちの方のご応
募をお待ちしております。

募集人数 2人以内

任期 平成17年8月〜平成18年3月(会議は年4回程度開催予定)

謝礼 会議出席1回につき、8,800円(税込)

応募資格
市内に住所を有する人。ただし、次に該当する人は応募できません。
(1)現在、市で設置するほかの審議会などの委員を3つ以上兼務している人
(2)昭和11年4月1日以前に生まれた人

応募方法
所定の申込書に必要事項を記入のうえ、下記までお申し込みください。

申し込み・問い合わせ
平成17年7月8日(金)※必着 までに、直接提出または郵送、FAX、電子メールにより、
〒031−8686八戸市内丸一丁目1−1八戸市政策推進室(電話43−2111内線662、
FAX47−1485)まで
2005/06/17
八戸市南郷区内の南部バス路線が10/1に廃止されるのに伴い、生活交通計画策定までの暫定措置として「南郷区
コミュニティバス」を運行する方針となっていますが、そのコミュニティバスを運行する交通事業者の公募を始めました。
「南郷コミュニティバス」運行業者の公募について
1.趣旨
 現在、南部バス株式会社が南郷区内において運行(経由)している路線バスに関して、一部系統の廃止・減便が
平成17年10月1日に予定されています。
 一方、八戸市におけるバス等による生活交通確保に向けた事業については、「合併後2年をめどに包括的なバス
のあり方の検討
の中で、見直し・改善を行う」ものとすることが旧南郷村との合併協定項目として定められています。
 このことを踏まえ、八戸市は新たに「南郷コミュニティバス」事業を実施し、地区住民の「足」を確保すること
といたしました。
ついては、運行業務を行う適切な事業者を選定するため、次により事業者を公募いたします。

2.公募の内容
(1)運行業務の内容
 市が提示する「業務要領(基本案)」を基本とし、採用された企画提案書の内容をもとに協議のうえ、業務内容
(委託契約の内容)を定めるものとします。

(2)応募者の資格
 次のすべての事項を満たす法人

道路運送法第4条第1項に規定する一般旅客自動車運送事業の許可を受けている者
平成15年4月1日以降、道路運送法第40条に規定する処分を受けていない者
(3)運行開始までの流れ

  公募開始(公募要項の配付)・・・平成17年6月17日
  運行業務説明会(応募予定者は前日までに出席の申し込みをしてください)・・・平成17年6月24日
  応募書類提出の締切・・・平成17年7月8日
  運行業者の選定・・・平成17年7月中旬
  運行委託契約の締結・・・平成17年7月下旬
  運行(委託業務)開始・・・平成17年10月1日

3.運行委託条件
(1)予定業務委託料  10,000,000円以内(消費税込み)
   委託料(6か月分)は、運行経費から運行業者が収受する運賃収入を差し引いた額とし、採用された見積り額を限
  度とします。

(2)予定業務期間   平成17年10月1日〜平成18年3月31日

(3)予定業務区域   八戸市南郷区内

4.運行業者の選定基準
  応募書類の審査および応募者とのヒアリングにより、運行業者を選定します。選定基準は、主として次のとおりです。

  見積額(収支計画の合理性)
  運行サービスの水準(利用者の利便性の維持・向上)
  運行の効率性・安全性
  その他選定に際し必要となる事項(利用促進方策・運行実績等)

5.応募の手続き
 応募を予定している事業者(法人)には、「南郷コミュニティバス運行業務委託運行業者公募要項」に基づき、所定の書
類を提出していただきます。
 公募要項・業務要領は、事務局にて直接配付しています。
(郵送による受け取りを希望する場合は、事務局までお問い合わせください)


次へつづく