八戸市の生活交通確保の取り組み

情報量が増えてきましたので、ページを分けました。
こちらは3ページ目です。

◆「南郷コミュニティバス」ダイヤ改正◆
2005/12/05
第2回生活交通委員会にて「南郷区コミュニティバス利用速報」にて、「患者輸送バス代替便の運行時間を診療所が
終わる時間に合わせて欲しい」という意見が通院利用者から多く寄せられたことを受け、12月5日より一部運行ダイ
ヤを改正した。
◆ダイヤ改正の内容◆
患者輸送バス(診療所発便)の発車時刻を変更
[改正内容] 中野地区線(諏訪発着系統)  :改正後 11:50←改正前 13:00
       鳩田地区線(泉清水発着系統) :改正後 13:20←改正前 14:30
       田代地区線(姉市沢発着系統) :改正後 11:50←改正前 13:00
       島守地区線(下頃巻沢発着系統):改正後 14:00←改正前 15:06
[改正理由] 診療所を発車する時間が遅く帰宅が遅くなることに対するバス利用者の意見が多数あり、「今より早い
       時間に運行してほしい」という要望が多かったため
[改正日時] 平成17年12月5日より新ダイヤで運行
◆ダイヤ改正の内容の関連リンク◆
八戸市お知らせ(南郷コミュニティバスの運行ダイヤが一部改正されます
 
◆生活交通再編方針(案)◆
2006/02/14
◆コメント◆
南郷コミュニティバスのダイヤ改正から2ヶ月程度を経て、第3回生活交通検討委員会が開催されました。
この間の具体的な動きは分かりませんが、12月5日に患者輸送バス代替便の一部ダイヤ改正を行い、しばらく時間を空
けた上で利用実態調査を行う必要があったからだと思われます。
私も第2回委員会から一般傍聴に参加していますが、生活交通検討委員会での大半は南郷コミュニティバスに時間を割
く割合が多くなったと感じていました。
成17年度も残り時間が短くなり生活交通再編計画の方針が示されるであろう第3回委員会は、マスコミも含めて注目さ
れた会議となりました。
◆会議の概要◆
会議の名称 第3回八戸市生活交通検討委員会
議   題 八戸市生活交通再編計画策定事業について
日   時 平成18年2月14日(火)13:30〜16:00頃まで  
場   所 八戸商工会館 4階大会議室
◆議事及び主な討議内容◆
1.南郷コミュニティバスの利用状況
 【路線別便別運行状況と乗車人員】
  コミュニティバス運行前と運行後を比較すると、廃止路線代替便、患者輸送バスともに平成17年(検討当時)平成
  16年と比較した結果、乗車人員が減少していることを報告
 【路線別収支状況】
  廃止路線代替便の営業係数(100円の収入を得るために要した経費)は、1000を超える数値となっており厳しい状
  況にあることを報告
 【患者輸送バスのダイヤ等改定前後の比較とダイヤ改善効果】
  利用者数はダイヤ改定後に約1.4倍増加、現金収入も約1.6倍増加したことを報告
 【南郷コミュニティバスの現在の状況】
  ・南郷区のみでなく、八戸市街地方面への需要が存在するが、路線バスとの乗継ぎ数は少ない
  ・患者輸送バスの利用は堅調であるが、廃止路線代替便の利用が少ない
  ・スクールバスと保育所送迎バスについては、利用者と利用目的がほぼ限定されている
  ・廃止路線代替便は路線数が多い反面、運行本数が少ない
  ・コミュニティバスの利用が必ずしも活発といえないため、採算が厳しい
  ・区内に人口が広く分散している
  ・ダイヤの改正は利用者に概ね受け入れられている

2.南郷区における生活交通再編計画の検討
 【南郷区の生活交通のあり方と路線の再編】
  ・住民利便性の向上(南郷区民の移動ニーズを反映)
  ・運行の効率化(地域に合った持続可能・運営可能な地域交通をつくる)
 【南郷区の生活交通再編方針】
  ・旧スクールバス対応便や旧保育所児童送迎バス対応便は別立てて運行する
   ⇒一般利用者との混乗を廃止し、コミュニティバスから分離して別立てで運行
  ・区内の利用目的の中心となっている患者輸送バスの利用利便性の向上を検討する
   ⇒路線数を整理し、迂回運行を減らす、八戸市街地での買い物・通院目的の利用に応えられるダイヤ・路線設定
    を検討、需要応答型公共交通(DRT)の導入を検討
  ・利用が少ない廃止路線代替便の抜本的な見直しを検討する
   ⇒ほぼ1便で1人しか乗車していない状況であり、廃止路線代替便を廃止し、DRT、乗合タクシー、タクシー
    利用券の給付等の方策について検討
  ・運送コストを減少できる方法の可能性を検討する
   ⇒行政が担うべき運送コストのあり方を検討、現行運賃の見直し、受益者負担のあり方等について検討

3.南浜・美保野地区における生活交通再編計画の検討
 【持続可能な生活交通のあり方と再編方針】
  ・地域住民の移動ニーズをきめ細かに反映した公共輸送計画をつくる
   ⇒現在のバス路線網で幹線的な軸を設定し、乗車密度が小さい支線的な部分をきめ細かなサービスで結びつける
    ゾーンバスシステムの検討
  ・多様な主体による持続可能な地域交通をつくる
   ⇒市営バスのみならず、バス事業者・タクシー事業者・各種送迎バス法人団体等も含めて地域交通を運営・運行
    していく方法について検討
  ・自動車に過度に依存しない、環境に配慮した交通体系をつくる
 【南浜・美保野地区の移動特性】
  ・中心部に集中する幹線的バス路線
  ・採算性の良い路線が近接に存在
  ・通勤・通学を除くと通院や買い物目的が多い
  ・昼間時を中心に労災病院や旭ヶ丘営業所で多くの乗客が入れ替わる
  ・運行本数が多く、サービス水準が高いバス路線が存在
       
【生活交通のあり方】
・移動ニーズを目的別にきめ細かにとらえた輸送計画の立案
・多様な主体が参加する持続可能な地域交通の確保
・環境に配慮した交通体系の構築
 【南浜・美保野地区生活交通の課題(再編の方向)】
  ・サービス水準維持・向上のための幹線・支線と分けたバス運用の可能性検討
  ・中心部や南浜・美保野地区周辺も含めた路線再編の検討
  ・朝や昼間時における通院・買物目的に配慮した運行ルートの検討
  ・昼間時における乗継ポイントの検討
  ・周辺バス路線を含めたネットワーク再編の検討
 【交通再編方針と再編案の概要】
  ●再編方針
  ・マクロ的な再編ゾーンバスシステムの導入
  ・各エリアごとの再編方針
  ●交通再編案案の概要
  ・ゾーンバスシステムの導入:幹線と支線系統による路線再編
  ・地域資源(昼間時にあいているスクールバス等)の有効活用
  ・ITS活用によるサービス向上

4.その他
 
南郷コミュニティバスの運行形態見直しへ(2006/02/15)
(デーリー東北2006年2月15日紙面より引用)
今 民間バスが八戸市南郷区内の一部路線を廃止したことに伴い、市が昨年十月から運行を始めた南郷コミュニティバ
スが苦戦している。廃止路線代替便の利用が予想以上に伸び悩み、全体の運賃収入は事前試算の三割程度にとどまって
いる。市はこれまでの利用状況や住民の移動ニーズを踏まえた上で、現行の運行形態を見直す方針だ。

 十四日、八戸商工会館で開かれた八戸市生活交通検討委員会(座長・今野惠喜八戸高専教授)で、四カ月間(昨年十
月―今年一月)の輸送実績と運行形態の見直し案が示された。
 南郷コミュニティバスは廃止路線代替便(平日十七便)、患者輸送対応便(隔日四便)、スクール(平日六便)、保
育所(平日、土曜日二便)を運行。業務は民間事業者に委託している。
 四カ月間の輸送実績をみると、全体の運賃収入は約二十五万円で、運行事業者が見込んだ約八十万円を大きく下回っ
た。患者輸送対応便は比較的安定した利用があるものの、廃止路線代替便の利用者は一日平均十八人と、一便に一人し
か乗車していない状況だ。
 運行形態の見直しは、代替便の対応が最大の課題となる。この日の委員会では、再編方法として▽バス車両を使用し
ながら最大限の効率化を図る▽ジャンボタクシーなどによる需要応答型公共交通(DRT)の導入▽タクシー利用への
転換―の三案が提示された。
 代替便の営業係数(百円の収入を得るための経費)が二千円を超えていることから、委員からは「持続可能な公共交
通を構築するには、一定の受益者負担も必要だ」との意見も出た。
 市は年度内に見直しの方向性をまとめ、来年春までに新たな形態での運行を開始したい意向だ。
 
◆最終委員会で示された八戸市生活交通再編方針(案)◆
2006/03/23
昨年から検討が続けられていた八戸市生活交通検討委員会の第4回委員会が開催されました。
実質的に最終の会議ということで、この日事務局から南郷コミュニティバス事業の再編方針(案)と南浜・美保野地区
における生活交通の再編方針(案)が示されました。
◆会議の概要◆
会議の名称 第4回八戸市生活交通検討委員会
議   題 八戸市生活交通再編計画策定事業について
日   時 平成18年3月23日(水)13:30〜16:00頃まで  
場   所 南浜公民館
議   事 1.南郷コミュニティバス事業の再編方針(案)について
      2.南浜地区・美保野地区における生活交通の再編方針(案)について
      3.今後の八戸市における公共交通のあり方について

委員会で再編方針(案)のメニューが複数提示され、その後の検討により、下記再編方針(案)が市議会にて報告され
ました(2006/04/21)
◆南郷コミュニティバス事業の再編方針(案)◆
1.スクールバス代替便及び保育所児童送迎バス代替便
 一般混乗方式(乗合輸送)を廃し、平成18年4月当初から児童性と送迎専用バスとして運用開始する。

2.患者輸送バス代替便及び廃止路線バス代替便
 平成19年1月をめどに事業の再編を図ることとする。なお、事業の再編以降も「地域住民の声を十分聞く必要があ
 る」との委員からの意見を踏まえ、住民のニーズを捉えながら、必要に応じて運用方法の改善を図っていくものとす
 る。
 
●患者輸送バス代替便の運用改善
 ・利用者の所要時間を短縮するための運行系統の再編
 ・現行の廃止バス路線代替便において比較的利用の多い時間帯での市街地への移動需要(路線バスへの乗継)にも対
  応できるよう運行ルートやダイヤの改善を図る。
 
●廃止バス路線代替便による定時定路線方式の廃止と代替方式の導入
  定時定路線方式から代替の複数案をもとに、運行コスト及び事業化の可能性等について総合的に判断した結果、利
  用者の事前予約に基づく効率的かつ柔軟な運行が可能な「予約式乗合タクシー方式」の導入を基本に事業の詳細設
  計を進める。
◆南浜・美保野地区における生活交通の再編方針(案)◆
今後の対応
  本年秋頃をめどに、国の調査事業(公共交通活性化プログラム)を活用し、両地区において2ヶ月程度の実証実験
  を行い、生活交通の再編にによる実効性・持続可能性を検証するものとする。
 
●南浜地区
 ・市民生活に大きな影響を及ぼす朝夕の中心街方面との直通便は当面維持する。
 ・医療機関や商業施設等が集積している湊高台地区への潜在的な通院需要に対応する循環線の設定もしくは路線の再
  編を検討する。
 ・乗車密度が薄い昼間の便は、バスの発着本数の多い鮫駅や岬台団地での幹線バス路線への乗継に配慮した運行と
  し、需要の喚起を図る。
  ただし、利用向上がみられない場合は、輸送密度が小さい区間を市営路線から切り離し、代替交通として持続可能
  性の高い運行方式(予約式乗合タクシー等)の導入を検討する。
 
●美保野地区
 ・市民生活に大きな影響を及ぼす朝夕の中心街方面との直通便は当面維持する。
 ・乗車密度が薄い昼間の便は、中心街方面への幹線バス路線や湊高台方面へのアクセスが可能となる旭ヶ丘営業所を
  乗継拠点とする町畑線および工業大学線を結ぶ順幹線を設定し、同3路線の運行効率化を図る。
 ・学生等のバス利用促進に資するITS(高度道路交通システム)活用による運行情報サービス(バスロケーション
  システム等)の導入を検討する。
バス利用促進へ実証実験/八戸
東奥日報(2006年4月6日)記事より引用
本国土交通省が、地域の公共交通の維持・活性化などを目指す「公共交通活性化総合プログラム」の本年度新規事業と
して、八戸市内でバス運行の実証実験を行うことになった。八戸市営バスの赤字路線である南浜、美保野両地区で利用
促進策を探る狙い。今秋にも実施の予定で、同省は今後、市などと運行方式や時期について具体的に話し合う。

 同プログラムは、地域で具体的に問題となっている事案などを解決するために、関係者で話し合う場をつくり、必要
な施策をまとめた行動計画を策定するための制度。実証実験はその一環として行う。

 南浜、美保野両地区は、八戸市営バスの中でもワースト1、2の赤字路線。同市は「市生活交通検討委員会」を設置
し、両地区の生活交通再編案を検討してきており、同省もこの再編案を踏まえながら運行方式などを決める方向だ。
再編案は、岬台団地から湊高台方面への循環線を新設することで南浜地区からの需要の掘り起こしを図るほか、日中
空いている学校法人バスの有効活用などを提言。一方、大学がある美保野地区については、運行情報サービスの充実
による学生の利用促進を目指す−としている。
 
◆今後の動向◆
上記のとおり、平成17年度検討が行われた「八戸市生活交通再編計画策定事業」では、今後の南郷コミュニティバス事
業と市営バス種差線・美保野線の再編方針について示されました。
これらの再編方針(案)はようやくスタート位置についただけの状態であり、これから具体的に行動していくことにな
ります。
南郷コミュニティバス事業については地元南郷区民との協議を進め、具体的な再編計画の立案に向けて動きだすことで
しょうし、市営バスの南浜・美保野地区の路線再編については国土交通省の「公共交通活性化プログラム」を活用した
上で平成18年度に実証実験を行いながら、具体的な再編計画の検討を行っていくことになります。
でも、八戸市が抱える生活交通の課題はこれだけではありません。
主なものを列挙すると、

 ●市営バス事業の経営規模縮小に向けた一部路線の民間への移管の最終年度(平成19年度中)
 ●路線移管完了後の市営バス事業の再点検(平成20年度予定)
 ●第1期(平成17年度)に市営から民間へ路線移管した路線の運行補助金終了に伴う運行継続の可否

  ⇒市営バスから移管された路線は移管初年度から3年間は運行費の一部を八戸市が負担することになっています。
   しかし、その3年目以降は路線がどうなるのかまだ決まっていません。
 
●青森県バス運行対策費補助制度(国と県の協調補助制度)生活交通路線(広域的・幹線的路線)の見直しに伴う
  八戸市としての取り組み(平成18年度or19年度)
 ●全市域的な公共交通(主にバス)に対する路線再編等も含めた検討(平成18年度)
 ●中心街市街地での交通体系のあり方の検討(平成18年度〜)

以上のように、まだまだ八戸市にとってはやるべき課題が山積しています。
しかし、八戸市が真摯に公共交通への取り組みを率先して対応していることは、県内自治体でも先進的なものであり、
全国から注目を集める取り組みも出てきています。
「中心街活性化」と「市郊外部での生活交通確保」という2つのキーワードを軸にして、これからも八戸市の実践的な
取り組みが進むことを期待しつつ、本コーナーを終わりたいと思います。


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